先進生命科学研究所の荒井准教授(理学部化学科兼務)の研究グループの研究論文が国際学術誌に掲載されました
先進生命科学研究所の荒井堅太准教授(理学部化学科兼務)の研究グループの論文が、化学分野の国際学術誌『Communications Chemistry』の「Editors’ highlights」に選出されました。同論文は、カルシウムイオンの濃度に応じて働く人工触媒の開発研究をまとめており、2025年3月に同誌へ掲載されたもの。「Editors’ highlights」には、今年度同誌に掲載された原著論文399報の中から、特に優れた20報が選ばれています。
化学触媒は化学反応を効率よく進める物質であり、細胞内代謝を人工的に制御する手段としても注目されています。しかし、従来の触媒化学では、触媒の活性が高くなるほど細胞に対する毒性が強くなる傾向があり、生体細胞内で安全かつ効果的に働く触媒の開発は大きな課題となっていました。同研究グループではこの課題を解決するため、細胞の状態に応じて働く「細胞駆動型アロステリック触媒」を開発。細胞内のカルシウムイオン濃度の変化を感知して活性が変化するため、カルシウムイオンが存在しない、あるいは低濃度の条件下ではほとんど活性しません。細胞の状態に応じて必要なときだけ働く特徴を持つことから、体内環境に応じて働く新薬の開発につながる可能性を示しました。
また、荒井准教授の研究室に所属する理学研究科1年次生の岩本駿平さんを中心とした研究グループでは、タンパク質が正しい立体構造を形成する「酸化的フォールディング」を効率よく進める新しい人工材料「固体シャペロン」を開発。同研究の論文が、今年2月に米国化学会が発行する国際学術誌『JACS Au』に掲載されました。こちらの論文は、特に重要な学術記事として、「ACS Editors’ Choice」として選ばれています。タンパク質は合成後、正しい立体構造に折りたたまれる(フォールディング)ことで機能します。本研究では、従来の酵素や薬剤を用いた方法とは異なるアプローチとして、ポリスチレン樹脂を使用した人工材料を生成。水に溶けないため、ろ過して計4回再利用することができ、新薬開発のコスト削減にもつながります。岩本さんは、「研究室の先輩から引き継ぎ約1年かけて進めてきた研究なので、成果を評価していただけてうれしく思います。今後は、いかに短時間でフォールディングできるかを検証するとともに、理学部4年時から続けている小分子化合物によるフォールディング反応の研究でも成果を挙げたい」と話しています。
荒井准教授は、「両研究共に、権威ある学術誌に掲載されたことをとてもうれしく思います。研究過程では狙った分子の合成がうまくいかなかったり、生成した材料のパフォーマンスにムラがあったりと苦労もありましたが、大学院生たちが地道な努力を続けてくれたことが今回の成果につながったと感じています。人工材料の研究では、マイクロ・ナノ開発センターの岡村陽介教授(工学部)にもご協力いただくなど、横断的な研究体制で取り組んできました。今後はマテリアルの形状最適化などに取り組み、薬剤の製造に役立つ技術として社会実装を目指します」と話しました。


