ペロブスカイト太陽電池は有機ペロブスカイト型太陽電池とも呼ばれ、有機イオン、鉛イオン、ヨウ素や臭素のようなハロゲン化物イオンが図のような結晶構造となっている物質です。

ペロブスカイト層(perovskite layer)に光が当たるとその光を吸収して励起電子と正孔を生じ、励起電子は下部の電子輸送層(ETL)へ、正孔は上部の正孔輸送層(HTL)へ引き寄せられます。ETLがマイナス極、HTLがプラス極になり、電位差が生じることで光による発電が可能となります。一般にETL側から光を照射するため、マイナス極側はFTOと呼ばれる透明な電極が使用され、プラス極側は金などが用いられます。

ペロブスカイト太陽電池の強みは、作製が容易なことです。基板を溶液を塗布し、基板を回転することできれいな膜を作るスピンコート法で作製されます。FTOがついているガラス基板上に電子輸送層になる二酸化チタンの溶液をスピンコートし、その上にペロブスカイト層をスピンコートし、さらにその上に正孔輸送層をスピンコートで塗布します。金電極はスピンコートで作製できず、真空中で金を蒸発させて基板につけます。作製が容易であることは、製造に必要な設備のコストが低く、安く作ることができるのもペロブスカイト太陽電池の強みです。

電子輸送層には二酸化チタンが用いられることが多いです。二酸化チタンには様々な結晶構造があり、ほとんどアナターゼ型とルチル型のみが利用されています。私たちの研究室ではこの2つに加えて、ブルカイト型やブロンズ型という、合成が難しい結晶構造の二酸化チタンを合成する技術をもっています。これらをペロブスカイト太陽電池に応用することで、発電効率の向上を目指しています。

アナターゼ型とブルカイト型の二酸化チタンを用いて電子輸送層を作製したところ、アナターゼ単独で13.86%、ブルカイト単独で14.92%、アナターゼ型の上にブルカイト型を形成すると16.82%、ブルカイト型の上にアナターゼ型を形成すると13.45%というエネルギー変換効率が得られました。電子輸送層の物質やその組み合わせが発電性能に寄与することが明らかになりました。

FTOガラス基板上に作製したペロブスカイト太陽電池の断面の電子顕微鏡画像です。FTOの上に二酸化チタン電子輸送層、ペロブスカイト層、正孔輸送層、金が成膜されています。二酸化チタンから金電極までの厚さは1μm以下と薄く、ITO-PENなどの樹脂基板上に作製することで曲げることも可能になります。

ガラス基板の替わりに樹脂基板(ITO-PEN)を用いることで、この写真のようにフレキシブルな太陽電池を作製することもできます。なお樹脂上に作製する場合は、樹脂の耐熱温度以下で作製するための工夫が必要になり、発電効率はガラスに比べてやや劣ります。